泡沫


いつか会える、いつでも会えるは二度と会えないにとても近いものだと知った。


新年の挨拶をして、今年もよろしくと言った翌日に連絡が取れなくなった人。


次はどこに行こうか、旅行の予定を立てるだけ立てて仲違いした人。


手を繋いで、体を重ねて、愛し合ったのに朝になれば一人だったこと。


一度や二度ではない。



声から忘れていずれその香りも忘れる。


思い出だけが何度も何度も私の脳味噌を揺らすのに、その思い出さえ私の作り物かもしれない。


少なくとも人に話してしまった思い出は私の作り物だろう。



別にそんなに綺麗なものでも特殊なものでもない。ありふれた話だ。


そう、世の中に溢れた、凡庸な話。


ありふれた話なら、こんなにも私の脳味噌の容量を奪わないでほしい。何年経っても私の心を占めないでほしい。


街で面影を探させないでほしい。日常の中に欠片を見つけて喜怒哀楽を揺らさないでほしい。



私だけが、いつまでも私の作った思い出で雁字搦めだ。