どうでもいい話
「なにか食べたいものありますか?」
「どこに行きますか?」
ほぼ初対面の人間に送った問いかけのLINEの返信が「○時に××で待ち合わせましょう」だけなのはどうなの?
女はスマホ片手に顔を歪めた。
これで行き先決まってなかったら最低だな…と思いながらわざわざ指摘してやるほど優しくも親しくもないので「わかりました!」とだけ返した。
つまらない男だと思う。
そしてそんなつまらない男に時間を割いている自分も当然につまらない女だ。
スマホを握ったまま明日の約束について考えた。今座っているソファの生地をぼーっと見つめる。
(あ…髪の毛ついてる…)
髪の毛をつまみながら明日行き先決められてても最低だなーと思った。
ほぼ初対面の人間の食の好みがわかる超能力がない限り、行き先を勝手に決めるのはめちゃくちゃ自分勝手か、『いいところを見せたい』というオナニーでしかないだろ。
髪の毛をゴミ箱に落としながらなんでこんな男に時間を割いてるんだろ…と思ってももう遅い。社会人として身についた約束を反故にしないという癖が明日の服を決めなければと思考を操る。
なにもかもが億劫でソファにより深く腰を沈めた。
もう選ぶ側ではないのだと分かっている、王子様を待ったところで歳を取るだけだ。
まだ外は明るい。明日まで時間はある。
女は静かに目蓋を下ろした。