地獄への道は
お題「#この1年の変化 」
ゆっくりと、ゆっくりと、しかし確かに、摩耗していく。
外に出ること、面と向かって話すこと、触れ合うこと、今まで「善」とされていたものが「悪」になって1年。
朝起きて、準備して、電車に乗って、仕事をして、家に帰って眠る日常。
そうやってすり減った部分を、旅行という非日常や、親しい友人と話すことや、愛する人と触れ合うことで補ってきた。
補って、やっとギリギリ生きてきたのに。
補うことを「善」とし褒められてきたのに。
それはいつしか「悪」になって、悪事を働くと「疫病」という「罰」がくだるらしい。
もう無理かもしれないと思う。
口を開いても、もう眩いものはない。
溢れるのは酷く陰気な自嘲ばかりだ。
ここを乗り切れば!
みんなで頑張れば!
押しつけられる善意に吐き気がする。
ゴールも見えない、給水所もないマラソンをしているようだと思う。
聞こえてくるのは善人の声援ばかりで、誰も血が流れている足の手当てはしてくれず、喉が枯れて血を吐いているのに止めてはくれない。
そうして途中棄権したランナーに、善人は口を揃えて悲しそうな顔をして言うのだ。
「言ってくれれば助けてあげたのに」