急行
毎日毎日飽きもせず乗っている急行を、今日は見送った。
いつも通り急行の2分前に来る各駅停車を見送る時間にホームにいたのに。
目の前に止まった急行を見つめることしかできなかった。これに乗らなければ仕事に遅れてしまう。足がすくんで動けないことも怖かったし、遅刻してしまうことも怖かった。
その場で人目を憚らず泣いてしまいそうだった。
なんとか次の準急に乗り込んだ。いつも通りではない朝に少し息が苦しくなった。
それでも止まる駅は同じで、会社への道も変わらない。ただ時間が少し違うだけ。
なんとか間に合っていつも通りの始業を迎える。
間に合っても誰も褒めてくれない。
今までも褒められるために生きてきたわけじゃない。生きてきたわけじゃないと思っていた。それでも学生の頃は意識的にも無意識的にも褒められる場所にいた。
大人になると誰も褒めてくれないし私も褒めない。ただ当たり前と使えないがあるだけ。
自分の言動が『褒めてほしい』ままの言動で恥ずかしくなる。もうずっと恥ずかしい。
さっさと割り切りをつけて先にいった同期を見てなんの感情も湧かないのは、自分と向き合った上での諦念なのか自分と向き合うことさえやめた怠惰なのかわからない。
わからないまま多分明日も急行に乗るんだろう。